ずいぶん以前の話です。

 彼は小6の模試ランキングで常に15番以内で、安定感は抜群でした。最高で5番くらいだったでしょうか。ちなみに、当時の小6模試の受験者数は毎回1000名超でした。

 ところが、その彼が1月の模試(当時、高知県の中学入試は日本で一番おそく、3月下旬に実施されており、1月模試は1300名超の最も受験者数が多い、つまり、受験に関わる全員が最重要模試であると認識していた模試)105番という成績をとってしまったのです。

 成績自体は何ら問題のない、というか、素晴らしいものですが、彼の抜群の安定感を知っている私から見たら、「いったい何があったんだ!」と目を疑う結果でした。

 模試返却後に受験校決定の保護者会があり、お母さんがいらっしゃってくださいましたので、模試の結果の件をたずねてみました。

 「それなんですよ、先生。悪かったでしょう」「何かあったんですか?」「実は当日、熱を出して」「えっ! 熱を出したんですか?」「はい」「なら、その日はゆっくり休んで、翌日に後日テストを受ければよかったのに」「ええ、私もそれを言ったんです。そしたら――」

 みなさん。彼はお母さんに何と言ったと思います? それを聞いて私は彼を尊敬しました。

「ええ、私もそれを言ったんです。そしたら『受験当日にどんな体調になるかわからないので、体調不良で受けてどれくらいの成績が取れるか知っておきたかった』って言うんです」

模試当日に発熱なんて、どう考えても不利ですよ。しかし彼は、その不利な条件を来たるべき受験のために有益に利用したんです。

いやぁ、驚きましたね。こんな小学生もいるんですよ、みなさん。

土佐塾中・高等学校へ進学する人には中学・高校の先輩となり、東京大学へ進学する人には大学の先輩となる、RT君の小6時代のエピソードでした。