遠い過去,会社の駐車場までの長い道のりを同僚と歩いていた。そして,そこに着いたとき,そこには,いつもと違う思わぬに風景に出会った。母猫とその猫の子と思われる1匹の子猫がまるで僕を待っていたかのように佇んでいた。その頃は,猫とは全く関わりが無かったので,それを避ける人のように自分の車まで進もうとした,そのとき,両手にすっぽり収まってしまうほどの大きさしかない,その子猫が,僕の前に立ちはだかって来た。可愛らしく鳴いて,まるで僕の懐に不意に飛び込んでくるように,僕の足元に体ごとぶつかって来たのには,本当に驚いた。そして,何度もすり寄ってきて,僕から離れようとしないのです。全身が真っ白な子猫の,この仕草が愛らしく,僕はたた、ただ,それを感動しながら眺めることしか出来なかった。不思議なことに,すぐ近くにいた母猫は,優しく見守っているだけだった。その事実は,同僚もはっきりと見届けていた。話はそれだけなのだが,この情景を,遠い昔のことだが,いまでも,それを思い出す。あのときのことを同僚に話すと,「あれは,本当に不思議な光景だった。」と同感してくれる。このことは,紛れもない真実なのだ。それは僕に起こった,もうないであろう希少な体験であった。