家人が、人生で、特に若いうちに一人の作家の全集を読んでおくといいと言われ夏目漱石全集を読み始めました。私は兄が図書館を開けるほどの蔵書家で、実家には森鴎外をはじめとする著名な作家の全集があったのですが、子どものときから手にとったこともありません。芥川龍之介からはじまり三島、太宰、宮本輝らの作品は数多く読み漁りましたが、さすがに全集を読もうという気にはなりませんでした。ですからそういう家人をエライなあと心から尊敬します。

 一作家の駄作や失敗作、全集によっては書簡まで掲載しているものがありますが、それらを読む意味がわからなかったのです。

 しかし、全集を読むというのは胆力が要ります。また読み切ったときの達成感も大きいでしょう。一個人の成長や考えの変化を知ることもできるでしょう。確かに役には立ちそうです。しかし、なあ。心酔している作家だからすべてを知りたいという想いで読むのではなく、こんな形の全集を読む入り口もあるのですね。

 私も家にある亡くなった父親の阿川弘之全集でも読もうかなあ、でも戦争物はちょっとねえ。